Terminate / 終止 (黒)(赤)
インスタント

クリーチャー1体を対象とし、それを破壊する。それは再生できない。


 終止は除去呪文の中では間違いなくトップクラス、性能と使い勝手は上から数えた方が速い呪文だ。
でも私は何度も終止を使い、散々迷いながら終止を抜く事に決めた。


 マジックに、モダンに復帰する時にとりあえず4枚入れると決めたカードの一つが終止だった。
実際終止はあきれるぐらい強い。プレーンシフトで初登場した時これがコモンなのかと驚いたし、アラーラ再誕で採録されたときも変わらないカードパワーを見せつけてくれた。
モダンでも変わらず終止は除去し続けた。
ゴブリンや天使やレジェンドやタイタン、たまにポルトガル人。
とりあえず50回以上終止して感じた事は、終止が弱い場面が確実に存在している。

呪禁は言うまでも無く効かない。
カウンターをすり抜けて着地したプレーンズウォーカーにも無意味。
何より呪文嵌めの対象になってしまうのが辛い。

かつて終止が出た時分に火炎舌のカヴーがタフネス4以下への抑止力になったように、モダンでは呪文嵌めが2マナ域への強力な抑止力になっている。
終止の2マナの軽さは大きいメリットだが、無視できないデメリットにもなってしまっている。

 モダンの環境のクリーチャーに、いや、デッキに入れるカードに求められる質は殺意ユーティリティーだ。
回避能力や除去耐性があるクリーチャー、アドバンテージが取れるスペル、圧倒的な火力やアンフェアなコンボ。
終止を殺意とユーティリティーの度合いで測ると半々ぐらいだろうか。

Ver2のデッキでは終止のスロットに英雄の破滅を2枚と追加の忌呪の発動1枚、ドラゴン枠に1枚と分散させた。
英雄の破滅は終止の出来なかったプレーンズウォーカーの直接破壊を可能にし、殺意とユーティリティーの度合いでは後者がやや多いだろう。
追加の忌呪の発動とドラゴンはデッキに更に丸みを持たせてくれた。


 そもそも前のVer1でも終止以外の2マナ以下のスペルで十分序盤はコントロール出来ていたんだ。2マナ以下のインスタントを瞬唱の魔道士で使いまわすのは胡散臭い動きだし、Delverみたいに土地を切り詰める構築でもない。

矛盾しているようだが私はデッキに更に丸みを持たせるために、万能除去である終止を私のグリクシスコントロールから抜く事に決めた。
Spellbound Dragon / 呪文縛りのドラゴン (3)(青)(赤)
クリーチャー — ドラゴン(Dragon)
飛行
呪文縛りのドラゴンが攻撃するたび、カードを1枚引き、その後カードを1枚捨てる。呪文縛りのドラゴンはターン終了時まで+X/+0の修整を受ける。Xは、その捨てたカードの点数で見たマナ・コストである。
3/5



 このドラゴンはアラーラブロックがスタンダードにあったころにも相棒だった。
忌呪の発動をモダンで復帰後発見し、私のグリクシスコントロールで最良のドラゴンだと感じたから、メインに据える事に決めた。


 呪文縛りのドラゴンをプレイして相手が取るファーストアクションはただ一つ、テキストの確認だ。
勿論当たり前の行動だ。私だって知らないカードをプレイされたらテキストを確認させてもらうし(エルドラージデッキに入っているカードの大半は意味不明なものばかりだ)、むしろ盤面に見えているカードを理解しないのは敗北に直結する。
そして、相手が知らないカードをプレイする事そのものが、アドバンテージにもなる。

呪文縛りのドラゴンのテキストは至ってシンプル。
飛行とルーターとパンプのみだ。CIPやPIGが無い分アドは確定しないし、殴られてもせいぜい5点くらうぐらいだから、このターンはまだ対処しなくてもいいだろう。
…と1ゲーム目の相手は思うだろう。ドラゴンがパワー10で殴ってくるまでは。

 パワー10というとタルモゴイフ(前回の2マナ域に書き忘れていた)が2体分、なんにせよ初期ライフの半分が飛ぶ数字だ。
相手の判断ミスは、こちらがグリクシスカラーのコントロール、もしくはクロックパーミと判断してしまった事にある。
だが実際は私のグリクシスコントロールには残酷な根本原理が入っているし、我らが指導者のプレインズウォーカー、ニコル・ボーラスも入っている。
墓地に落ちた残酷な根本原理は、ゲームが長引いてしまったら瞬唱の魔道士で無駄なく再利用でき、トドメの一撃でボーラスを捨てるのもフレイバー的にもボーラスの力を借りているようでお気に入りだ。

 私のデッキにとっての呪文縛りのドラゴンは、白青デッキのトラフトとも言える。
中盤以降に出てくる対処しないと死んでしまう理不尽なフィニッシャーだ。
トラフトと違い除去耐性は何も無いが、その分相手に更に未知の選択を迫れるとも思っている。

相手がトラフトやその他フィニッシャークラスのクリーチャーを唱えたらプレイヤーが取れる対応は本能的にかなり絞られる。打ち消すか除去するか対応策をドローやサーチで探すか、ブロッカーを用意するかだ。
除去する場合は布告を通すか全体除去で押し流すしかない。ブロッカーを用意するためには相手の除去や打ち消しを掻い潜らないといけない。
不用意に現れる6点クロックはそれぐらい対応が慌ただしくなる。

呪文縛りのドラゴンの場合上記に加え、他のクリーチャー同様の対応への保留が追加される。
見た事が無いクリーチャーだ。けどまぁいつでも除去出来るしこっちはプラン通りにゲームを進められているから、このターンは場を固めよう。
…という具合に。

言うまでもなく相手の手なりで除去を打ち込まれる時も多々ある。けれどパワー10で殴られない限り、誰もこいつの爆発力を認識出来ないんだ。(残酷な根本原理を打ってテキスト確認される時に世代差を感じてしまう)


 呪文縛りのドラゴンだけで勝てたゲームは間違いなく無かったが、呪文縛りのドラゴンがいないと勝てなかったゲームは多々あった。

プレイングとしては5ターン目フルタップの甘え、残酷な根本原理を唱えるための打ち消しへのデコイ、残酷な根本原理後のフィニッシュのための3パターンがある。

どのパターンも強烈だが、残酷な根本原理後の2回攻撃が一番多く、5ターン目に出すプランは嵌る相手なら本当にそれだけで勝ててしまう。


 呪文縛りのドラゴンは確かに他の起動能力や除去耐性、マナレシオやクロックの安定さでは劣っているかもしれない。
けれど最初に書いた通り、私のデッキには忌呪の発動が入っている。忌呪の発動のボーナスを貰いつつデッキカラーに合い、それでいて唱えるのが現実的なドラゴンとして、私は呪文縛りのドラゴンにスロットを割く事に決めた。

何よりも、殴って10点の気持ち良さは病みつきになる。


Foul-Tongue Invocation / 忌呪の発動 (2)(黒)
インスタント
忌呪の発動を唱えるための追加コストとして、あなたの手札にあるドラゴン(Dragon)・カードを1枚公開してもよい。
プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーはクリーチャーを1体生け贄に捧げる。あなたが忌呪の発動を唱えた時点でドラゴン・カードを公開したかドラゴンをコントロールしていたなら、あなたは4点のライフを得る。

Ancestral Vision / 祖先の幻視
〔青〕 ソーサリー

待機4 ― (青)(このカードをあなたの手札から唱えるのではなく、(青)を支払うとともにそれを時間(time)カウンターが4個置かれた状態で追放する。あなたのアップキープの開始時に、時間カウンターを1個取り除く。最後の1個を取り除いたとき、それをそのマナ・コストを支払うことなく唱える。)
プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーはカードを3枚引く。



 祖先の幻視はモダンが制定されてからついこの間、2016年4月8日まで禁止されていました。
効果は単純に4ターン後にカードを3枚引く、言うなればただ強のカードだ。
でも私は何回か使ってみてデッキから抜くことに決めた。


 祖先の幻視を抜いた理由は2つ。
待機4待機コストが自分のグリコンに噛み合わなかったからだ。


 待機4、4ターン待つというのは長い。順調に土地を伸ばしていったら4枚置いているアップキープに来るのだが、モダンでの5ターン目は中々鬼門だと思う。
ビートダウンやバーンならとうに10点以上のライフを削っているはずだし、解禁されたセプターコンボやフェアリーも活発に動き始める。もしくはヴェールのリリアナが着地していたりその他諸々。

私のグリコンは昔ながらのコントロールで、序盤を凌ぎ中盤以降で一気に捲る構成だ。
『インスタントと瞬唱の魔道士で序盤を凌ぐ→ドローカードは必須』なのは当然だし実際強かった。
でも相手のデッキが青かったら祖先の幻視は一気にアテにならなくなる。

私も入れてるし、青いデッキに祖先の幻視以上に間違いなく入っている差し戻し、待機呪文もとい祖先の幻視は差し戻しと最悪の相性だ。

 例えば聖トラフトの霊入りのクロックパーミ相手を想定しよう。
こちらは後攻1ターン目に祖先の幻視を待機、先行だった相手は4ターン目にトラフトを唱える。手札に差し戻しがあったのでトラフトを差し戻して、こちらの後攻4ターン目、特に動きも無く土地を置いて返す。
そして相手の5ターン目、相手は間違いなく土地を置いてターンを返してくる。祖先の幻視を差し戻すために。

祖先の幻視への差し戻しを打ち消せたと仮定しよう。手札は増えた、5枚目の土地を置き運が良ければ4つ、悪ければ1つ立っている状態でターンを返す。
そして相手はカウンターを構えている状態でトラフトを再び唱えるだろう。

 一連の流れは最悪のパターンだし、まだ忌呪の発動で捌ける可能性も十分に有る。でも個人的には祖先の幻視のために打ち消し合戦をするのは馬鹿げていると思う。マナ無しでドロー出来るのが売りなはずなのに相手が青いってだけで差し戻しや打ち消しを警戒しないといけないなんて。


 二つ目の待機コストについて、青1マナというのはやっぱり破格の軽さだ。だが待機させるのと唱えるのは根本的に違う事を理解しておかないといけない。

今度の対戦でも私はいつも通り後攻、相手は1ターン目からゴブリンの先達で殴ってきた。ダイス運は悪かったけど運よく島を入手出来た。
ターンを貰い手札は9枚、祖先の幻視と呪文嵌めと稲妻と血染めのぬかるみetc...
ディスカードするのが勿体ないのと、赤相手に3点スタートするのが怖いから島を置いて祖先の幻視を待機させてターンを返す。

相手は炎樹族の使者から稲妻のやっかいものを展開、二人は幸せな結魂をし6点クロックを刻んでターンエンド。

 2ターン目から6点クロックは確かに極端だけど、モダンの2マナ域は危険が一杯だ。
飛行機械の鋳造所苦花電結の荒廃者。あんまり見かけないけど等時の王笏小悪疫に他にも盛りだくさん。

後攻1ターン目は怖くて待機できないのが分かった。2ターン目は?
使命感によって差し戻しか、呪文嵌めと稲妻を構えなくてはならない。
よし、3ターン目に待機させて7ターン目にカードを3枚引こう!

それって残酷な根本原理でいいよね?


 3ゲーム1マッチで毎回1ゲーム目が先行を取れ、尚且つ青いデッキと絶対当たらない強運なら、初動が遅いコントロールデッキでも祖先の幻視を入れるべきだと思う。
でも私はそんな強運ではないしどちらかというと屑運だから、祖先の幻視を私のグリクシスコントロールから抜く事に決めた。


 ドローソースが差し戻しだけで回る程コントロールは甘くない。
禁忌の錬金術についてはまた今度。